それはタスク管理の問題じゃない

「残業の上限なんか無視してやれ!」と上司がなかなかの剣幕で僕に向かって言い放った。「え?いいんですか?」と思わず問い返す。別に僕としては、今さら残業時間があと30時間ぐらい増えてもなんとか耐え得るだろう。それによって上司が甘んじて罰を受けるというのなら、むしろ喜んでやる。ルールを破っても、働いた分の給与は支給されるから、僕としては願ったり叶ったりだ。
ここでいう残業の上限というのは、法的な上限であったり、労働協約上の決め事であったりするものだ。僕は今年度、それに対してもはやスレスレの状況にあるため、この先はできる限り残業を抑制する方向で動こうとしている。しかし、それは自主的にルールを破るのは避けるべきという価値観に従ってやっていることなので、ルールを無視しろと命令されるなら、それに従うしかない。
しかし、僕が問い返すと上司は一瞬間を置いて「一緒に怒られることになるから、できるだけそうはならないように終わらせてくれ」と言った。なんだ、前言撤回に等しいぐらいトーンダウンしたぞ。おそらく、僕の反応が思ってたのと違ったんだろう。別にいいんだったらやります的な反応を予想してなかったのだ。
それにしても、ずっと長時間労働が続いてる部下の心身を気遣うなんてことは、この人の中には1ミリもないのが残念でならない。自分が怒られるから、やっぱりそれはやめてみたいな発言はあまりにもかっこ悪すぎる。それと社会的に労働時間のルールが設けられているのは、心身に異常をきたすリスクがあるからだ。それを無視してやれ、と言うのは、僕がどうなろうと構わないという本音の表れである。
一緒に怒られることになると言うけれど、指示した上司が怒られるぐらいの常識はうちの会社には備わっていると思う。僕に対して死ねと言われたら死ぬのか?的な注意や警告はあるだろうし、自分でも稚拙なふるまいだなと思うけど、まぁあんなに恫喝されて、拒否するのは無理なのだ。
そんなことがあったタイミングでうちあわせCast第168回 「何のためのタスク管理か」を聞いた。上司がやれと言っているタスクは会社として緊急かつ重要であることは僕も同じ認識だ。しかし、緊急かつ重要なタスクを遂行するためには社会的ルールを破ってもよい・・・はずがない。が、これまでの10年間、そんな局面は何回もあった。自分の価値観を裏切ったことも数知れずあっただろう。
こんな環境では健全なタスク管理なんかできないと改めて認識するととてもつらい。今となっては守るべき家族があって放り出すことなんかできないわけだが、たしかにうちあわせCastで語られてたように、会社や同僚に迷惑がかかる、という思いで居続ける選択をしてきてしまったことは、たぶん間違いだったんだろう。でも、その犠牲のもとに成り立った幸せなできごともたくさんあったのだ。そう思わなければやってられない。